テロメアの長さや短縮スピードに大きな悪影響を及ぼすとされるのが、心血管疾患や糖尿病、アルツハイマー病、ガンなどの病気ですが、2009年に2人の共同研究者とともにノーベル医学生理学賞を受賞したエリザベス・ブラックバーン(Elizabeth Blackburn)博士の元同僚であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のマリー・ウォーレイ(Mary Whooley)博士が60歳以上の780人を4年間追跡した「安定期冠動脈疾患外来患者調査」など多くの研究から、テロメアの短さが様々な病気を予測し、さらに死亡率にも関係することが明確に示されています。実際、下記のような世界的に知られた医療関係者が、テロメアと病気の関連性を一般に公開するケースも多くあります。
●東京都健康長寿医療センター研究所 相田順子副部長
「テロメアが短くなってくると、染色体がどうしても不安定になってくるので、遺伝子の変異が起きやすい状態になります。なので、ガンになりやすいというふうに考えられます。食道がんのほかに口腔のがん、すい臓がん、皮膚がんなどがそうです。」
●ハンティントン医療研究所 ケビン・キング医師
「記憶をつかさどる海馬が縮小すると、認知症のリスクや脳機能が衰えるリスクが高くなると考えられます。テロメアの短縮が、脳の老化に深く関係しているのです。」
また、アメリカ・ユタ大学の遺伝学者リチャード・カーソン(Richard Cawthon)博士が143人を15〜20人にわたり追跡した研究では、テロメアが短い人の死亡率がテロメアの長い人の2倍近いことが発見されており、テロメア短縮が老化や細胞老化に直接関係しているのではなく、加齢による疾患リスクに関連することが分かっています。つまり、年齢を重ねることによって短くなったテロメアが、病気を引き起こしやすくする一因となるということが言えるのです。
* 代表的なテロメア短縮で生じるとされる病気
●老化(皮膚の老化を含む)
●エイズ
●アルツハイマー病
●ガン
●心臓血管疾患
●細胞及び組織の移植
●慢性閉塞性肺疾患
●ネコなき症候群
●変性椎間板疾患
●ダウン症
●先天性角化不全症
●ファンコーニ貧血
●全身免疫不全
●特発性肺線維症
●肝硬変
●加齢黄斑変性症
●筋ジストロフィー
●変形性膝関節症
●骨粗鬆症
●プロジェリア症候群
●関節リウマチ
●結節性硬化症
●ウェルナー症候群
(参考文献: 別冊日経サイエンス 人体の不思議 / 日経サイエンス編集部, 2018)