目次
● テロメアを長くする&伸ばす方法(治療法,技術)
1. 心理的ストレス
2. 運動
3. 睡眠
4. 食生活
5. 化学物質
6. 住む場所
7. 人間関係
テロメアを長くする&伸ばす方法(治療法,技術)
寿命に影響を与えるとされるテロメアは、身体の中の様々な組織や臓器、血液中のすべての細胞に入っているDNAの一種ですが、テロメアを保護したり、その短縮速度を人為的に遅くすること、あるいは長さを少しだけでも再生させるような方法はあるのでしょうか?
実は近年の様々なテロメアに関する研究では、当人が考える事柄であったり、普段食べている食事、日々の運動、睡眠時間と良質な眠りであるかどうか、住んでいる地域や場所、人間関係などがテロメアの長さに大きく影響を与えることが分かっています。そして、これらが良い習慣として実践されていれば、テロメアはダメージを受けにくくなると言われています。
そこで、テロメアの長さに影響を与える要因を、心理的ストレス、運動、睡眠、食生活、化学物質、住む場所、人間関係と項目を分けて記載しましたので、ぜひ参考にしてみてください。
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1. 心理的ストレス
仕事が忙しいのに何年も収入が伸び悩んでいたり、認知症の家族を介護していて日々精神的苦痛を感じているなど、心理的ストレスを感じている人ほどテロメアの短縮スピードが早いと言われています。しかも、ストレスを感じる期間が長く、すでに慢性化してしまっている人のテロメアは、大きなダメージを受けてしまっているという研究結果もあるほどです。
しかし近年の研究では、テロメアが受けているダメージの大きさよりも、むしろそのストレスに対してどのように反応するかが重要であることが分かっており、たとえば家族の介護で自身の時間を取られている人であっても、その行動を嫌々行っているのか、または楽しく勉強の一環として行っているのかなどで、テロメアにどのような影響を与えるかが変わってくることが判明しています。
つまりは、起こった困難や事象に対して、精神的にどのようなことを感じたり考えたりするかが重要なことであり、けっしてストレスが悪いものではないことを理解する必要がありそうです。
2. 運動
日常的に運動をしている人は、ほとんど運動をしていない人と比べて、大きなストレスを受けた時にテロメアへのダメージが少ないことが分かっています。また、運動の量に関しては、中程度の有酸素運動を1回45分間、週3回ペースで6ヵ月間継続して行うことでテロメラーゼが2倍に増加したという研究結果が報告されています。
運動がテロメアに好影響を与える理由は、運動することで心臓や脳への血流量が増えて、酸化ストレスや炎症が抑えられることが一因としてあり、結果として筋肉や骨が強くなるほか、高血圧や心臓病、心血管系疾患、うつ病、糖尿病、メタボリックシンドローム、認知症などの病気にかかるリスクが減ることにつながります。実際に、ウォーキングと自転車、筋力トレーニングなど、様々な分野の運動を行う人ほど、テロメアは長いという結果が出ているほどです。
また、運動は身体の免疫機能を整え、免疫機能の老化を遅らせる働きがあり、これもテロメアの維持を助ける要素となっています。
3. 睡眠
1日6時間以上眠り、睡眠の質が良いと感じているほど、テロメアの短縮リスクは低いことがこれまでの研究で明らかになっており、とくに70歳以上の人たちに顕著にその傾向が現れるようです。
そして、睡眠の質を良くするためには、脳内の視交叉上核を正常に機能させることが重要で、そのためには日中に外へ出て日の光を浴び、夜間は早めに就寝するというごく当たり前の生活を心がけると良いようです。充分な睡眠をとることは、運動することと同じように身体の免疫機能を整え、テロメアの維持を助ける要素となります。
4. 食生活
テロメアに好影響を与える食物として特に有名なものが、海藻や青魚に含まれる「オメガ3脂肪酸」です。血液中にDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸が多い人は、老化の速度がゆっくりしていることが分かっています。
一方、糖分が豊富に入っている缶ジュースや炭酸飲料を頻繁に飲むことは、テロメアに悪影響を及ぼす可能性があることが知られており、心理的感情を乱降下させるストレスや脳機能疾患、糖尿病などの原因ともなりうるため、飲料ジュースとしての使用は極力控えた方が良いでしょう。
5. 化学物質
ダイオキシン、フラン、ヒ素、粒子状物質(PM)、ベンゼン(ガソリンなどの石油製品やタバコの煙などを介して)、ポリ塩化ビフェニル類(PCB。高脂肪の動物性製品に含まれることがある禁止化合物)などの化学物質は、テロメアを長くする化学物質と言われていますが、無制御な細胞増殖やガン細胞の発生、遺伝子変異が起こりやすくなるという欠点があるので注意が必要です。とくにガン細胞に関しては、テロメアが長ければ次々と分裂増殖を繰り返しガン性腫瘍になりやすいという特徴があります。
一方、喫煙、殺虫剤への暴露、毛髪染料、洗剤、農薬、工場の廃棄物、大気汚染などが酸化ストレスを引き起こしテロメアの短縮につながるという研究があり、とくに化学成分の観点からは、一酸化炭素と7種類の農薬である除草剤のアラクロール、メトラクロール、トリフルラリン、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸、殺虫剤のペルメトリン、トキサフェン及びDDTが、テロメアの著しい短縮に関連があったとされています。
6. 住む場所
住む場所は人の健康を左右する1つの要素です。住む地域によって安心感や警戒感が生まれ、それが生理的ストレスの程度や心の状態、テロメアの長さに影響を及ぼします。そしてそれは、所得階層や社会階層が高い低いが関係なく、信頼感の高い社会的結束があるかどうかが非常に重要なポイントになるようです。一方で、信用に欠ける行いや暴力の多発、薬物乱用など悪い行為が継続的に行われている地域では、体であれ心であれ不健康度合いが増し、結果的にテロメアの短縮に悪影響を与えることが多くの研究結果から示されています。
また、香港で行われた2009年の研究では、九龍市街区と緑豊かな新界に住む約900人の高齢男性の調査では、テロメアが短かったのは九龍市街区の男性だったことが報告されており、この研究では緑地がテロメアの健康に役立つ可能性が示唆されています。
7. 人間関係
普段付き合っている人たちとの人間関係や、結婚相手に満足している人ほど統計的にわずかな程度健康に良い影響を与えることが分かっています。
また、結婚生活の質とテロメアの長さとの相関関係についての研究はまだ具体的に行われていませんが、既婚者やパートナーと同居している人のテロメアが長いことは分かっており、とくに結婚年数が長い熟年カップルでその傾向が強く見られたと言われています。
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(参考文献: 細胞から若返る! テロメア・エフェクト / Elizabeth Blackburn, Elissa Epel, 森内 薫, 2017)
(参考文献: 老化はなぜ進むのか BLUE BACKS / 近藤 祥司, 2009)